P-Lynnの日記

ほぼ0泊3日 翻訳という仕事 2017/08/13 15:17

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その他


50を過ぎてから、体力がぐんと落ちた。無理ができなくなった。1度徹夜をすると、その後の数日間は、調子がおかしくなる。だから、もう無理はしないと決意する。

だから、クライアントからの案件を辞退することが多くなった。

でも、今回は、かなり無理をしなくてはいけなかった。

今までの15年以上翻訳経験中、最も難しいものだった。

この仕事は2人の翻訳者に割り当てられたが、一人は辞退してしまった。だからすぐに別の翻訳者が割り当てられた。

まず、辞書にない言葉がたくさん出てきた。というか、辞書にない使い方だ。

あとで、ちょっと古典的な言い回しであることが解った。具体的には又別の覚書日記で紹介する。

一つの文がやたら長い。ひどいのになると、10行ぐらいある1つの節が、1つの文で構成されている。これは悪文かというと、そうでもない。文法的には間違えがないようだ。

今回不思議なことに、この賃貸契約書から、家主の人柄を感じ取りことができた。この物件の姿が頭の中に浮かんできた。どんな建物か、どんな場所にあるか、家主の姿、そういうことは一切書いてなかったが、はっきりと情景が浮かんできた。なぜかはわからないが、小太り、初老、神経質な女性の話を聞いているようでもあった。文章そのものの雰囲気が、そうさせたのかもしれない。契約書を読んで、空想を楽しんだのも初めてかもしれない。

納期3日前から、徹夜の必要性を感じ、気持ちを準備した。辛いけど、まず、徹夜をする自分を楽しめるように、これも想像力を駆使した。ワインがある。皆が寝静まった時に、音楽を聞きながらワインを飲もうと思った。音楽はクラッシック。ドビュッシーでいいかな。それから、マダム・キュリーが、ラジウムを抽出するときに、数日寝なかったのを思い出した。そのあと、倒れてしまうのだけど。だんだん徹夜が楽しみになってきた。家族に宣言する。

1泊目は朝の3時頃、どうしようもなく眠くなり、思考力が落ちたので、1時間の仮眠をした。朝の8時頃になると、 眠気がどこかへ消えた。ふらふらするのも何故かなくなり、普通に仕事をした。2泊目は、朝の3時ぐらいまで持ちこたえたが、だんだんキーボードに指を置いたまま、眠りに落ちる頻度が高くなった。1時間の仮眠を取ったが、またすぐ眠くなったので、シャワーに入った。私の目は、ひどく充血していた。怖い。その後また眠くなったが、時間がないので、なんとか我慢した。そうこうしているうちに納品の時間が来てしまった。

納期に遅れるなんて、絶対タブーなのだけど、どうしても、数ページ残ってしまった。仕方なく、これを、たくさんの謝罪の言葉と共に一旦納品。その後、倒れるように、ベッドで眠る。自分のベットで寝るのはやはり気持ちがいい。起きたら昼過だった。

遅れてもいいから、とにかくやり遂げなくては。息子に、「一旦始めたことは、最後までやり遂げる」と親としての模範も見せたかった。納品は夕方の6時だった。すごい遅れだった。ありえない。計算ミスだった。こんな古い英語のような契約書だとは、気が付かなかった。

でも、全てやり遂げた時の達成感は大きかった。それから、いくらか、昔の文法を学ばせてもらった。この習得が私には最も嬉しいものだった。まだ日は高く、暑い。プールで泳ぐことにした。私のアパートの建物にはピザ屋が入っている。イタリア人がやってる。プールで泳いだ後、そこで数枚のピザを購入し、部屋で家族と、Guardians of the Galaxyを見る。会話が面白い。

3日間で2時間の睡眠は辛かったが、この仕事から幾つかのことを学んだ。それが今回は特に嬉しかった。普段、古い英語の文法に関しての記事を、それとなく読んでいたので、それも役に立った。

古い英語は決して古いのではない。現代も、いろいろなところに使われているのだ。

 


ブラボー(19

コメント (2)

OED Loves Me Not
OED Loves Me Not
2017/08/13 17:46
実に面白い報告文でした。3日間で2時間しか寝ないで古めかしい英文による契約書を訳し続け、それなのにもかかわらずその徹夜を楽しむ努力をし、つくづく嫌になるどころかそれによって英語の新たな重要な一面を学び取るという充実感を感じとるなんて、あなたは実にタフな人です。
Jama & Feli(退席中)
Jama & Feli(退席中)
2017/08/13 18:25
OEDさん、ありがとうございます。
空想というのは、時には、仕事を遅らせたり、事故の原因となりますが、何かを忍耐する際に、大きな助けになることもあります。
イタリア映画でもありました。Life Is Beautifulでしたっけ。

本文には書きませんでしたが、泣きたくなりもしました。たくさん毛が抜けました。でも、一旦夢中になると、時間も忘れ、疲れていることも忘れます。事務的な契約書を訳しながら、空想にひたり、空想をしているうちに、夢の世界に入ってしまったこともありました。目が冷めると、自分の指がキーボードの上にあって、まだ同じ文を作業しているところでした。
私の空想では、物件は、レンガ造りの、木のたくさん生えた公園のような大きな敷地に立っていました。秋で、赤や黄色の木の葉がいっぱい落ちていて、そこに貯蔵所もあり、太った初老の、口うるさいおばさんが、あれはダメだこれはダメだと、時には物件に即時入室して、借家人を困らせる、そう言いう世界でした。実際の物件とは、かけ離れていると思いますが。

私は、精神的に決してタフに見えないのですが、しぶといのです。
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