上海bangの日記

年をとるのもいいものだ②(第二の人生探索日記51) 2018/02/07 09:07

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このテーマでもう1つ書こうと思う。大事なことを思い出したからだ。

人生、時間が経ってみないと心の整理がつかないものがある。特に、自分の感情に関することだ。「なぜ、あの時そう判断したのか」、「なぜ、あの時そうしたのか」・・・。

人は感情の動物だ。知性より感情が先立つ。自分でも理解できないことがある。でも、年を重ねると、その時の自分の気持ちが客観的に見えるようになってくる。

僕の人生最大の悔いは、1999年10月に起きた営業車両事故だ。上海で会社を立ち上げて4年目、ようやく事業が軌道に 乗り出した時だった。その事故で、創業時から僕をずっと支えてきてくれた子飼いの部下を亡くしてしまった。

亡くなった営業マンは29歳 、婚約したばかりで僕も結婚式で挨拶を頼まれていた。新居を買って改装中だった。隣の浙江省への市場調査に行く途中、運転手が居眠りしてダンプカーに追突した。

安全対策を怠った自分を僕は責めた。泊まりでいくよう命じていたけれど、彼は家の改装のために日帰りする予定だったという。会社は急激に発展していて、何もかもが足りない状態だった。でも、安全対策は書面化して、ちゃんとした教育をしておくべきだった。あまりにも業績が順調なので、「何か悪いことが起こりはしないか?」という悪い予感を持っていた。

遺族との補償交渉は難航した。中国ではこれが終わらないと葬式はしない。労災保険なんて当時なかったから、遺族と会社の相対交渉になる。

営業マンのご両親との交渉はすぐに終わった。亡くなった営業マンが、僕のことを日頃からいろいろ話していてくれて、僕に好感と信頼を持っていてくれたからだ(僕はその営業マンを弟のように可愛がっていた)。一方、婚約者側の両親は強硬だった。交渉の場で、僕を、「うちの娘を傷物にしやがって!」と罵った。法律に定められた以上の和解金を提示しているにかかわらず決して納得しようとしなかった。

その間、部下は24時間体制で通夜守をしていた。蝋燭の火が消えないよう、二交代で番をし続けた。事故で大怪我をしたアシスタント営業マンもいたので、病院での看護との掛け持ちだった。そんな状態でも、社員はお客さんの品切れを起こさないよう自主的に営業活動も続けてくれていた。営業をしないと現金収入がないので給料が払えないという事情もあった。

交渉を始めてから1週間が過ぎた。関係者は誰もが疲れのピークに達していた。とうとう営業マンのお母さんが、婚約者の両親に向かって怒りを爆発させた。「うちの息子の遺体を腐らせる気か?」学校の先生をしていたという普段は温厚なお母さんが、身体から振り絞って出した怒声には凄みがあった。これには婚約者の両親もたじろいだ。・・・補償交渉は終わった。そして、葬式も無事済ませることができた。

その後、僕はこのことを自分の中で封印し続けた。僕の人生の中で、どうしても心の整理がつかない出来事だったからだ・・・。

そして、一昨年前の夏、セブ留学を前に「上海の思い出II」(10話)の中で封印を解き、その時の思い出を認めて、36年に及んだ会社生活でお世話になった方々に、卒論代わりにお贈りした。あの事故から、すでに17年の時が経っていた。書き終わって、ようやく胸のつかえが下りた。

今では、僕は自分のことを許している。そして、最悪の事態の中で最善を尽くした自分を立派だったとさえ思えている。いつかあの世に行ったなら、あの営業マンは僕をきっと笑顔で迎えてくれるだろう。この歳になって、あの時の自分のことがようやく理解できた。


ブラボー(37

コメント (5)

上海bang
上海bang
2018/02/07 09:11
このエピソードをしたためた「上海の思い出II」の第9話です。
https://alcom.alc.co.jp/users/240293/diary/show/400967
野ばら
野ばら
2018/02/07 19:10
でもそれは事故だから、上海さんのせいではないし、(もちろん上司として社会的には責任を問われるのはわかりますが)、婚約者のご両親の言い分もちょっとおかしいと思います・・・でも、日本ってそんなものなのでしょうね・・・ちなみに私は感情で生きるタイプではないですよ、感性で生きるタイプです、パッと考えがひらめくんです、それに従って生きる・・・(笑 どっちにしても論理的じゃないかもですが)
おかどん
おかどん
2018/02/07 20:55
簡単にコメントできないお話です。婚約者のご両親の言い分は、普通に(日本で)考えるとおかしいですが、誰かに怒りをぶつけなければ収まらない、そういう気持ちは、ある意味で理解できます。その矢面に立って、辛抱強く誠意をもって交渉された上海bangさん、本当に素晴らしいです。亡くなられた営業マンのお母様もさすがですが、やはり上海bangさんを信頼なさっていたからこその行動でしょう。大変なご経験ですが、大事な想い出でもありますね。
上海bang
上海bang
2018/02/08 06:25
野ばらさん、コメント有難うございます。「感性」ですか。久々に聞いた言葉です。僕は青春時代に置き忘れてきちゃったかもしれないな。「今を感じる愛
力で生きていく」、僕も取り戻したいな。
上海bang
上海bang
2018/02/08 06:33
おかどんさん、コメント有難うございます。こういう場面を乗り越えてきているので僕の中国語は筋金入りです。僕の作ったこの会社が今も上海で発展し続け、当時の部下の何人かが幹部になっています。それが何よりも嬉しいですね。
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上海bang

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