われ潜入に成功せりの日記

(9) 全20巻の世界最大の英語辞書 OED の思い出 2017/02/17 15:32

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英語


【OED(20巻本)の思ひ出】

(この文章は、2年前に別のサイトで僕が書いたものを、そのままコピーしたものです。)

OED Online (The Oxford English Dictionary の online 版) の使用料は、最近では1年分をまとめて払っているが、またもや1年が切れそうになったので、今さっき更新料を払った。この「更新料」は、まさに「香辛料」と同じくらいに僕にとっては刺激の強い、経済的にきついものだ。しかし僕にとっては OED だけは欠かせない。さらには、CD-ROM 版の情報は古くて、最新版は online 版にしかないので、この高い使用料は払い続けなければならない。

OED(20巻本)を初めて買ったのは、25歳のときだった。別の仕事を2年で大きく挫折して人生や社会に希望を失いかけていた、というか、絶望の淵にいたとさえいえる僕は、2年ぶりに語学に命がけで取り組むことにより、魂の傷を癒そうとしていたらしい。

地方都市に住む僕は、その地方で最大の書店(とはいえ、 東京の中心地にある書店に比べると実に小さい書店)で OED Compact Edition を買った。2冊本だけど、20巻本がすべて縮小文字ですべて収めてあり、ルーペがついている。

この2冊本は、何キロあったろうか?製造業の会社で翻訳・通訳その他の雑用に追われながら、僕はこの OED を買ったり、ギリシャ語、ラテン語、フランス語、中国語、アラビア語などの諸言語の学習本や大きな辞書を買い求め、主に英語による洋書をペーパーバックで買いまくり、語学カセットも買い求め、語学に躍起になっていた。

そんな中で買った OED(20巻本)の縮小印刷版だった。 実に使いにくかった。今から35年近くも前のことだった。 英語力も一般教養も何もかもいい加減だったそのころの僕に、まともに OED など使えるはずもなかった。それでも、僕は OED を手元に置かなければ気が済まなかった。

Liddel Scott とかいう人が作った Greek-English Lexicon や Latin Dictionary の大きなものとかも持っていた。泉井久之助か誰か有名な人が書いた400ページにわたるラテン語学習本を60日間、400時間(ひょっとしたら600時間)くらいかけて独学で、サラリーマン生活の中で下らない実務的な仕事をかき分け、5時過ぎになったら同僚や上司からの白い目にさらされながら、女子の従業員よりも早く退社し、会社のビルから出た途端に僕は手のひらにボールペンで書いてあるラテン語の動詞活用表を暗記したり、ポケットの中にあったラテン語文法事項のメモを引き出し、歩きながらそれを朗読したものだった。

サラリーマンをしながら、一日に7時間も8時間もの勉強時間を捻出(ねんしゅつ)するのは、並大抵ではない。それを僕はやり続けた。当然のことながら、僕は会社に長いあいだいられるはずもない。

その会社から海外の、誰も行きたがらないような戦争中の国に出稼ぎにいき、そこで現地のアラビア語を勉強しながら、僕はフランス語や英語や中国語やラテン語に取り組み、かたわらで文学書や哲学書を耽読していた。

OED(20巻本)は、あれから何度か買いなおした。最初は 20巻本を30万円ほどもはたいて買った。そのあと数年して、CD-ROM 版も出回り始めたので、それも買った。(当時のヴァージョンは原始的なものだったのに、10 万円くらいした。)

自分自身の教育費、そしてのちになって配偶者のための教育費に、僕は収入の大部分をはたき続けた。だからお金なんか貯まるはずもない。

躍起になっていたけど、なかなか僕にとって OED は遠い 存在だった。まさに "I was in love with the OED, who loved me not (i.e. who did not love me)." という感じだった。

14年ほど前(確か西暦2000年のとき)、OED Online というサービスが始まった。さっそくそれを申し込んで使い始めた。しかしそれでもまだまだ OED は使いこなせなかった。確かに、最初の一か月くらいは使える。しかしそのあとはだんだん使わなくなり、数か月たつとまったく使わなくなる。たまに OED を使いたくなるけど、それはごくまれであり、仮にその辞書を引いても、どこをどのように見ればいいのかわかりにくく、なんせ情報が多すぎるので、自分の探す情報を見つけるのに時間がかかりすぎるので、結局は他の簡便な辞書だけで済ませてしまうことになる。

この1年9か月ほどのあいだは、OED Online の購読を間断なく続けてきた。お金がたくさんかかった。膨大な洋書も(読めもしないものを含めて)買ってきた。読めるものだけ、僕自身に使えるものだけ、僕が吸収できるものだけを買えばよいのだが、なかなか自分ではどの本や教材が自分にとって適合するのか、まずは買ってみて、そして使ってみて、そして1年も2年も、あるいは何年も経ってからでないとわからないものだ。それどころか、35年ほども前に買って使おうとした OED が、本当に使えるようになったのは、ほんの2年ほど前の話なのだ。人間、何が自分にとって役立ち、何を自分は吸収でき、何が自分に適しているのかは、何十年も経ってからでないとわからないと思う。

本当は僕は OED Online の購読が続けられるほど経済的に楽な人間でも何でもない。それどころか貯蓄もきわめて少なく、いくらか貯めていた貯金は14年ほど前に事業に失敗してなくしてしまった。詐欺にも会って、多額の金を失い、精神的にも大きな打撃を受けた。

しかし、煙草を20年前にやめて、酒は10年ほど前から激減させ、さらには1年ほど前からはほとんど禁酒に近く、楽しみのためのおやつも食べないし、食べ歩きのようなこともしたことがないので、基本的に僕は書籍や自分自身のための教育費以外には、金を使うことがないのだ。だからこれからも、たとえ貧乏しても、OED Online や洋書などは、少し贅沢でもいいから買い続けたいと思う。それが僕の人生なのだ。

さふ云へば、夕べ、"Brewer's Dictionary of Phrase and Fable" の最新版(2012年版)が気になったので、アマゾンで注文した。この本も、20年くらい前にそのころの最新版を初めて買った。ろくに使いこなせず、数年後に手放した。今、再びこの本を手に取ろうとしている。今度こそこの本を攻略せねばならぬ。

(2015年4月10日)

ブラボー(10

コメント (1)

OED Loves Me Not
OED Loves Me Not
2017/02/17 19:30
ちなみに、OED Online の年間の使用料は、消費税も払わないといけないので、年間で4万円くらいです。しかしその年間4万円の元を取るくらいに使う人にとっては、安いくらいに感じます。それくらいに、OED Online という辞書サービスは充実しています。

なお、無料でも少しは使えるようになっているはずなので、興味のある人はアクセスしてみてください。
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