(8) tea という単語に見る英英辞典 OED の楽しみ 2017/03/16 08:09

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The Oxford English Dictionary は、2000年までの段階では紙版と CD-ROM 版だけがあり、Second Edition だった。2000年のときからは OED Online というサービスが始まり、同時に Third Edition の編集作業が始まった。3か月に一度、Third Edition の改訂版の一部が発表されていく。Third Edition の改訂が完成するのは、2037年の予定。つまり20年後だ。今では全体の半分近くが終わったという感じだろうか?OED の改訂作業がどのように進んでいるのかについては、Wikipedia に詳しい。

なお、CD-ROM 版ならば3年前までは中古で3万円以下、そして今ではさらに値崩れして 9,000 円以下なので安いけど、OED Online は(日本での消費税まで徴収されるのだが)毎年4万円くらいずつ払わないといけない。しかし最新の Third Edition が3か月に一度ずつ導入されていくので、その大々的な改訂の様子を手に取って観察できる。

完成後には従来の2倍くらいの量になるという。つまり、もともと全20巻、2万ページくらいの量だったのだが、全部で全40巻、4万ページくらいの量になりそうなのだ。実際、途中の段階を見ていると、確かに全体が2倍になっているような気が僕にもする。

OED Third Edition, Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Oxford_English_Dictionary#Third_edition

僕は昔から OED に片思いしてきた。だからこそ僕の今のハンドルネームを "OED Loves Me Not" としている。もともと日本語で「OED に片思い」としていたのだが、海外サイトでも通用するような名前というわけで、長ったらしい名前にせざるを得なかった。かといって "OED Lover" というだけなら、僕の OED に対する思いが十分には表せていない。やはり僕と OED との関係は "(The) OED Loves Me ★Not★" という感じなのだ。

35年も前、製造業で会社員をしていた25歳の時に、自宅から歩いたり電車に乗ったりして1時間ほどかけて行った先の大きな書店で買い求めた OED Compact Edition は、手がちぎれるかと思うほど重いのを頑張って持ち帰った。当時で5万円くらいした。2冊だけ。つまりその当時は First Edition だったのだが、それでも全20巻くらいあったはずだ。それを2冊に縮刷していた。だから文字が小さいので裸眼では読めない。だからルーペがついていた。

使いにくいことこの上ない。だからと言って、OED を生まれて初めて使う僕などがフルヴァージョンというか30万円ほどはたいて20冊もの OED を買うわけにもいかなかった。当時はもちろん CD-ROM もないし、CD というものもないし、さらには VHS さえなかったのではないか?二か国語放送というものが初めて導入されたころだった。

5 kg なのか 10 kg なのか知らないが、ともかく重いこの辞書を持ち帰って、さっそく引いた単語が tea だったと思う。そこで僕は言語の歴史の長さと深さ、そして全世界にわたる言語どうしのつながりに驚嘆したものだった。tea という単語は、僕と OED との関係のなれそめだったのだ。

OED Second Edition の cha という項目を見ると、次のように書いてある。

★ cha / chah
Properly, the name of tea n. in the Mandarin dialect of Chinese, which was occasionally used in English at the first introduction of the beverage. (Some subsequently applied it as a name to the special form of rolled tea used in central Asia.) Now used slang for ‘tea’; cf. chai n., char n.6

つまり、お茶はもともと中国で cha に近く発音されていて、それをポルトガル人が西洋にもたらした。そのときに cha という官話中国語 (Mandarin Chinese) の形も英語の中で使われていた時期もあったということだ。そして英語では、tea という形が、次の解説にある通り定着した。

★ tea
French thé, Spanish te, Italian tè, Dutch and German thee, Danish, Swedish te, modern Latin thea; < (perhaps through Malay te, teh) Chinese, Amoy dialect te, in Fuchau tiä = Mandarin ch'a (in ancient Chinese probably kia); whence Portuguese cha, obsolete Spanish cha, obsolete Italian cià, Russian čaj, Persian, Urdu chā (10th cent.), Arabic shāy, Turkish chāy. The Portuguese brought the form cha (which is Cantonese as well as Mandarin) from Macao. This form also passed overland into Russia. The form te (thé) was brought into Europe by the Dutch, probably from the Malay at Bantam (if not from Formosa, where the Fuhkien or Amoy form was used). The original English pronunciation /teː/, sometimes indicated by spelling tay, is found in rhymes down to 1762, and remains in many dialects; but the current /tiː/ is found already in the 17th cent., shown in rhymes and by the spelling tee.
(OED Second Edition)

tea という英単語の語源については、上記のように書いてある。このままでは読みにくいだろうから、適度に解説を加えながら表記しなおしてみる。


(1) French thé, フランス語、「テ」
(2) Spanish te, スペイン語、「テ」
(3) Italian tè, イタリア語、「テ」
(4) Dutch and German thee, オランダ語・ドイツ語
(5) Danish, Swedish te, デンマーク語・スウェーデン語
(6) modern Latin thea; 近代ラテン語、「テア」

(7) < (perhaps through Malay te, teh) そしてこれはおそらくはマレー語の te, teh から由来している。
(8) Chinese, Amoy dialect te, 中国語のアモイ方言の te
(9) in Fuchau (福州?) tiä
(10) = Mandarin (官話中国語) ch'a (in ancient Chinese probably kia); 上記の (9) は官話中国語の形と同じ。古代中国語ではおそらく kia と言っていただろう。現代の標準中国語では、「茶」(chá)と書き、
https://www.youtube.com/watch?v=a0Fc76T9hP0
このビデオで実演されているように発音する。

whence (上記の中国語から、次のような各国語の単語が派生した。)
(11) Portuguese cha, 現代ポルトガル語でも cha
(12) obsolete Spanish cha, 古いスペイン語でも「チャ」
(13) obsolete Italian cià, 古いイタリア語でも「チャ」
(14) Russian čaj, 現代ロシア語で「チャイ」、ロシアのキリル文字では чай
(15) Persian, Urdu chā (10th cent.), ペルシャ語・ウルドゥー語
(16) Arabic shāy, アラビア語では「シャーイ」。アラビア文字では شاي と書く。ただし僕が32年前に働いていたイラクでは「チャイ」というふうに発音していた。この発音は、トルコ語 (çay) と同じようなものであるらしい。
(17) Turkish chāy. トルコ語の本当の綴りは、çay であり、僕の耳には「チャイ」と聞こえる。

このあと、ポルトガル人がお茶をどのように西洋にもたらしたかなどについて詳しく解説してある。

The Portuguese brought the form cha (which is Cantonese as well as Mandarin) from Macao. This form also passed overland into Russia. The form te (thé) was brought into Europe by the Dutch, probably from the Malay at Bantam [if not from Formosa, where the Fuhkien (福建) or Amoy (厦門) form was used].

さらに、昔の英語の発音は「テー」とか「テイ」だったけど、そのあとに「ティー」になったのだと書いている。

The original English pronunciation /teː/, sometimes indicated by spelling tay, is found in rhymes down to 1762, and remains in many dialects; but the current /tiː/ is found already in the 17th cent., shown in rhymes and by the spelling tee.

★他の記事と同様に、この記事もあとで少し編集しなおすかもしれない。

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コメント (2)

Felicia...
Felicia...
2017/03/17 02:41
「茶」は、世界共通語ですね。
私が小さい時は、祖父が自分の茶畑から、お茶を取ってきて、気長に手もみでお茶を作ってました。静岡の水も美味しいので、かなり美味しいお茶を入れることができました。幼いながらも飲み物の中で、緑茶ほど美味しいものはないと思っていました。店で買うどんな高級茶よりも、祖父の作るお茶が美味しいと思ってました。祖父がなくなって、茶畑がなくなっても、しばらくは美味しいお茶を飲んでいましたが、とうとうなくなり、その後、店から購入するようになりました。もうあれほど美味しいお茶は飲めなくなりました。
現在母が、茶道を教えてます。茶道には、お茶をおいしく入れることだけではなく、茶室に飾る絵、使用する器、着物なども理解しないといけません。
お茶というのは、人の生活の中の面白い位置にある飲み物だと思います。
英語とは関連のない話でした。
OED Loves Me Not
OED Loves Me Not
2017/03/17 06:20
Felicia さんのおじいさんもお茶畑を持ってらっしゃったのですね。静岡はお茶を栽培しているだけでなく、水もおいしいのだとは知りませんでした。静岡の人は、お茶をよく飲むので長生きだということを聞いたことがあります。

ところで、僕がここで書いた元の記事では、OED への僕の思い入れについての説明が長くなって、そのあとの西洋語やアラビア語やロシア語など広い範囲にわたる諸言語における「お茶、紅茶」に相当する単語がすべて中国語由来であるということに僕が25歳のときに OED を読んでいて気づいたときの新鮮な驚きについて書くのを忘れて、ピンボケしたような文章になってしまいました。

少し詳しく言うと、実は中国の主な二つの方言であるアモイ方言での te と中国官話(Mandarin Chinese) などでの kia (tia, cha) との二つから来ているというわけですね。
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